象牙は、印鑑の中では高級素材として愛用されてきましたが、ワシントン条約によって輸入規制がされているため、現在ではさらに希少価値の高い素材となっています。
ここでは実印や銀行印の定番素材である象牙印鑑について詳しくご紹介します。
銀行印の素材として有名な象牙とは?
象牙の歴史は古く、日本では奈良の正倉院宝物となっている工芸品の素材として用いられており、珊瑚(サンゴ)や鼈甲(ベツコウ)に並んで珍重されていました。
その後象牙工芸品はしばらく姿を消していますが、鎌倉・室町時代には日本に象牙の流入があったことが確認されています。
主たる輸入先は中国・東南アジアでしたが、古代には南部に相当数いたとされている中国の象も、唐の時代にはほぼ絶滅したと言われています。
そのため東南アジアから中国を経由して日本に輸入するルートが最も用いられていました。
印材として以外の用途は、加工しやすい性質から楽器の部品、工芸品として加工されて用いられることが多いです。
印材としての象牙は、使用される部位によってランクがあり、安物は表面近くの筋が多く入っている物になります。象牙の先端に行くほど、また、中心に位置する部位ほど貴重な物とされています。
象牙で銀行印を作成するメリット・デメリット
銀行印に象牙を使用するメリットは、適度に吸湿性があって手に馴染みやすく、硬度も硬すぎず柔らか過ぎないため、加工性が金属や水晶、大理石、翡翠などより優れていることが挙げられます。
そのため銀行印として使用する材質の中でも、かなり優れていると言えます。
また、朱肉の馴染みがきわめてよく、見た目の高級感もあるため、契約や公式書類では印鑑が欠かせない日本では、ワシントン条約が締結するまでは、象牙の一番の輸入国でした。
デメリットは、やはり高級品なのでかなり値が張るということが一番に挙げられます。
そして、最高級の部位のものは限られた業者しか取り扱うことが出来ないため、手に入りにくくなっています。
そして象牙には、側面から見て年輪のように模様が出る横目印材と呼ばれるものがあり、特徴のある文様ではありますが、木材と同じように強度は縦目の物には劣り、割れやすいので注意が必要です。
象牙の銀行印を選ぶ際のポイント
象牙の銀行印は非常に人気がありますが、乱獲による象牙の減少により、最高級の部位のものは限られた業者からしか手に入りません。
象牙に関する取引は、届出業者のみが許可されており、象牙の管理表の記録を経済産業省へ報告することが義務付けられています。
そのため特定国際種事業届出事業者で、経済産業省認証の本象牙を使用している業者から購入するのが良いでしょう。
近年では、象牙と全く同じ質感のある素材を牛乳のカゼイン蛋白と酸化チタン粉末から作ることが可能になり、これを利用した象牙風の安価な製品も存在します。
こういった偽物を象牙と称して販売する業者も少なからず存在するため、注意が必要です。
象牙の銀行印は、金額も1万5千円~10万程度とかなり値が張ります。
しかし、高級感があり、材質が良く長持ちするため、一生物として購入する人が多いのが特徴です。