不動産の購入や自動車の売買、保険の加入など生活の中で重要なお金の動きがある場合に登場する「実印」と「印鑑登録証明書」のセット。
実印は自身が住民登録している市区町村の役所に届け出を行い受理された印鑑のことを指します(→実印とは?)。
では「印鑑登録証明書」はどういった書類で、どのような理由で必要とされるのでしょうか。
ここでは「印鑑登録証明書」の説明と発行から取得までに必要な手続きの流れをご紹介いたします。
「印鑑登録証明書」は公的に認められた実印であることの証明書
一般的に「印鑑証明」と呼ばれていますが、正式には「印鑑登録証明書」という名前です。
印鑑登録証明書は、押印された印鑑がきちんと役所に登録済みの実印であることを証明する大切な書類です。
例えば不動産を購入し、住宅ローンの契約をするシーンに直面した場合。
住宅ローンを組むとなれば数百万円から数千万円の高額な借金をすることになりますから、ローン会社側に「自身が責任を持って支払いを行うこと」を証明し、信用してもらわなければなりません。
そこで必要となるのが「実印」と「印鑑登録証明書」。
印鑑だけですと、それが本当に役所に届け出の済んでいる実印であるかどうかの証明ができず、いまひとつ信用性に欠けてしまいます。
印鑑登録証明書がセットになることで実印の証明になり、ローン契約などの重要な取り引きがスムーズに行えるのです。
印鑑証明書の発行申請は代理人でも可能
印鑑登録証明書は原則本人が発行・取得を行うものですが、代理人による申請も可能となっています。
代理人が申請を行う場合でも基本的に委任状は必要なく、印鑑登録カードが委任状の代わりを果たします。
ただし自治体によっては委任状を必要とする場合もあるので事前に確認しておきましょう。
また本人であっても代理人であっても持ち物や手続きの流れは同じですが、申請の際に取得者の氏名・住所・生年月日を記入する場面があるので、代理人が申請する場合は取得者の個人情報を把握しておく必要があります。
いざ窓口へ出向いても、住所や生年月日が分からないという状況にならないよう注意してくださいね。
印鑑証明の取得ができる場所
印鑑登録証明書を発行できる場所は主に以下の3か所です。
- 住民登録をしている市区町村の役所
- 役所の出張所、証明書交付センター
- コンビニエンスストア
役所での印鑑登録は自治事務(地方公共団体による事務)のため各市区町村によって細かい条件などが異なります。
出張先や旅行先など、住民登録をしている市区町村以外の場所では印鑑登録証明書の発行は行えません。
また後述しますが、マイナンバーカードまたは住民基本台帳カードがあればコンビニで印鑑登録証明書の発行が行える地域もあります。
法人用の印鑑証明書を発行申請する場合
法人用の印鑑登録が完了しているのであれば、個人と同様に印鑑登録証明書を発行することができます。
法人用の場合は役所ではなく、法務省本局または出張所の登記所へ申請することになります。
個人の場合と異なり、本店の所在地以外の登記所でも申請が可能です。
また郵送でも申請できますが、切手代が余分にかかるので窓口での申請がおすすめです。
印鑑証明書の発行申請に必要なもの
印鑑登録証明書の発行に必要な持ち物は以下の3点です。
- 印鑑登録証または印鑑登録カード
- 手数料(300円程度)
- 印鑑登録証明書交付申請書
- 住基カードまたはマイナンバーカード(コンビニの場合)
印鑑登録証明書交付申請書は役所の公式サイトから申請書をダウンロード・印刷してあらかじめ記入を済ませておくと当日の流れがスムーズになるのでおすすめです。
こちらは窓口にて記入することもできるため、事前に用意していなくても特に問題はありません。
この他、自治体によっては本人確認のできる書類(免許証など)を必要とする場合があるので念のため用意しておくと良いでしょう。
逆に本人確認のできる書類を持っていたとしても印鑑登録証がないと発行してもらえませんので、印鑑登録証は忘れないようにしてください。
また実印を持っていくべきかとお悩みの方もいるかと思いますが、印鑑登録証明書の発行に実印は必要ありません。
特に代理人が申請を行う場合、実印と印鑑登録証明書がセットで手に入ることで悪用される危険性があります。
代理人に実印を渡すことは絶対にせず、印鑑登録証(印鑑登録カード)とは別の場所に保管しておきましょう。
印鑑証明を取得するまでの手続きと流れ
まずは役所と役所・市民センター内などにある自動交付機での手続きと流れについて確認していきましょう。
印鑑登録証明書の発行手順はとてもシンプルです。
住民登録をした市区町村の役所で取得する
- 前述した持ち物を用意し、住民登録および実印登録をしてある市区町村の役所へ行きます。
- 印鑑登録証明書交付申請書が未記入の場合は役所内にある用紙を受け取り記入します。
- 印鑑登録証(印鑑登録カード)・印鑑登録証明書交付申請書を合わせて窓口へ提出。(必要があれば本人確認書類も)
- 印鑑登録証明書が発行されたら手数料を支払って終了となります。
市内の自動交付機で発行する
- 暗証番号が設定された印鑑登録カードを用意し、市内の自動交付機が設置された施設へ行きます。
- 自動交付機に印鑑登録カードを差し込み、暗証番号を入力します。(3回間違えると発行できない場合があるので注意)
- 印鑑登録証明書が発行されたら手数料を支払って終了となります。
自動交付機を利用すれば窓口での待ち時間を大幅に短縮でき、より簡単に印鑑登録証明書を取得できます。
また休日でも稼働していることが多いので、平日に役所へ行く時間がとれない方にもおすすめです。
全ての市区町村で自動交付機が設置されているわけではありませんので、自動交付機を扱っているかどうかは各市区町村の公式サイトを確認してみましょう。
コンビニでの印鑑証明書の発行も可能に
2016年1月よりマイナンバー制度が導入され、マイナンバーカードを使ってコンビニで印鑑登録証明書を発行できるようになりました。
これにより、前述した自動交付機の稼働を取りやめてコンビニ交付に切り替える地域が増えてきています。
まだコンビニ交付に対応していない地域もありますが、今後ますます増えてくるでしょう。
住民登録および実印登録をしている市区町村がコンビニ交付に対応しているかどうかは以下のページから確認することができます。
https://www.lg-waps.go.jp/01-04.html
住民登録および実印登録をしている市区町村がコンビニ交付に対応している場合、実際に印鑑登録証明書を発行するコンビニは市区町村内でなくても構いません。
また毎日6:30~23:00まで取得可能となっており、窓口が営業していない時間帯で急を要する場合でも出先から最寄りのコンビニで発行ができるため大変便利です。
コンビニでの「印鑑登録証明書」発行の流れ
- 店内に設置されているキオスク端末(マルチコピー機)の画面に表示されている「行政サービス」ボタンをタッチします。
- 利用に際しての同意事項が表示されるので、「同意する」をタッチします。
- メニューから「証明書交付サービス」をタッチします。
- キオスク端末(マルチコピー機)の所定のカード置き場にマイナンバーカード(または住基カード)を置きます。
- 「お住まいの市区町村の証明書」をタッチします。
- マイナンバーカード(または住基カード)の暗証番号を入力します。
- マイナンバーカード(または住基カード)を取り外します。
- 証明書の種類が表示されるので、「印鑑登録証明書」をタッチします。
- 必要な部数を入力します。
- 発行内容を確認し、手数料を入金します。
- 印鑑登録証明書が指定した部数だけ印刷されるので、取り出して完了です。
- 領収書が印刷されるのでこちらも受け取りましょう。
証明書の印刷が終わると取り忘れ防止の音声が流れます。
取り忘れがないかどうかを確認し、音声停止ボタンを押しておきましょう。
各コンビニの画面遷移は以下のページから確認することができます。
https://www.lg-waps.go.jp/01-01.html
マイナンバーカードの申請方法
上記のコンビニ交付サービスを利用するには、マイナンバーカード(または住基カード)を持っていることが必須条件となります。
住基カードはマイナンバー制度の導入に伴い、現在は新規の発行を受け付けていません。
すでに住基カードを持っている方のみ、有効期限内の利用が可能です。
マイナンバーカードの申請には以下の4つの方法があります。
郵便による申請
マイナンバーが送られてきた際、通知カードとともに交付申請書が付いているはずです。
この交付申請書に必要事項を記入して顔写真を貼り付け、送付用封筒に入れてポストに投函すれば完了です。
交付申請書や送付用封筒を無くしてしまった場合はこちらのページからダウンロードが可能です。
https://www.kojinbango-card.go.jp/kofushinse-yubin/
パソコンによる申請
交付申請用のWEBサイト(https://net.kojinbango-card.go.jp/SS_SERVICE_OUT/FA01S001Action.do)へアクセスし、画面の指示に従って顔写真の添付と必要事項の入力を行います。
パソコンから申請する場合は、交付申請書に記載された23桁の申請書IDが必要になります。
交付申請書を無くしてしまった場合は窓口で新しいものをもらうか、前述の郵送にて申請を行いましょう。
スマートフォンによる申請
交付申請書に記載されたQRコードを読み取り、リンク先の交付申請用のWEBサイトから画面の指示に従って顔写真の添付と必要事項の入力を行います。
QRコードから読み込んだ場合は自動で申請書IDが入力されるので自身で入力する必要はありません。
証明写真機からの申請
証明写真機のタッチパネルから「個人番号カード申請」を選択し、交付申請書に記載されたQRコードをバーコードリーダーにかざします。
入金後、画面の指示に従って顔写真を撮影し、必要事項を入力して送信すれば完了です。
全ての証明写真機が対応しているわけではないので、撮影前に対応機かどうかを確認しておきましょう。
取得した「印鑑登録証明書」には有効期限がない?
印鑑登録証明書には有効期限がありません。
一度取得したものは基本的に使い続けることが可能です。
ただし、契約相手によっては「発行から3カ月以内」「発行から6カ月以内」と指定される場合があります。
印鑑登録証明書を求められる契約は大きなお金が動く場合が多く、責任を持って支払いが行える人物であると証明するためにもなるべく信用性の高い書類を用意することが大切です。
発行日の古い印鑑登録証明書では信用性が足りず、契約相手が不安に感じてしまいます。
また有効期限が無いからと言って、事前にたくさんの印鑑登録証明書を取得しておくのも避けた方が良いでしょう。
万が一、実印の保管場所を知った第3者に悪用されるとも限りません。
印鑑証明を発行・取得する際の注意事項
ここまでご説明してきた中で、印鑑登録証明書を発行する際に特に注意が必要なことをまとめておきます。
印鑑登録を済ませておく
印鑑登録証明書を発行するには、住民登録をしている市区町村に実印の届け出が完了している必要があります。
実印が登録されていない状態で証明書を発行することはできませんので、まずは印鑑の登録を行いましょう。
印鑑登録カードを用意する
印鑑登録カードは印鑑登録時に受け取るもので、印鑑登録証明書を発行する際に必要となります。
もし無くしてしまった場合は「印鑑登録廃止」の申請を行い、再度印鑑登録を行いましょう。
印鑑登録カードが第3者の手に渡ってしまった場合に悪用される危険性があるため、紛失が判明した時点で速やかに行うことをおすすめします。
印鑑登録カードの暗証番号を覚えておく
印鑑登録カードの暗証番号は入力を3回間違えるとロックがかかってしまい、再設定をしない限り印鑑登録証明書の発行ができない状態になる場合があります。
ロックがかかってしまった、または暗証番号を設定したのが何年も前のことで忘れてしまったという場合は窓口で新しい暗証番号を設定しなくてはなりません。
その際は顔写真付きの本人確認書類が必要となりますので注意しましょう。
引っ越す場合の注意事項
印鑑登録が完了している場合で市外に引っ越すことになった場合、現在住んでいる市区町村で「印鑑登録廃止」の申請を行い、引っ越し先で新たに実印を登録する必要があります。
申請を行わなくても転出届を出すことで自動的に印鑑登録が廃止されますが、自身で申請を行ったうえで印鑑登録証(印鑑登録カード)を返却しておくと確実です。
こちらの手続きは引っ越し先が同じ市内であれば基本的に必要ありませんが、自治体によっては市内であっても区町村が異なる場合は必要となっているところもあるので事前に確認おくことをおすすめします。
ちなみに、引っ越し前に取得した印鑑登録証明書は住所が異なるため使えなくなります。
もし手元に残っているのであればきちんと破棄しておきましょう。
印鑑証明の発行・取得についてのまとめ
印鑑登録証明書の発行・取得に必要な書類や手続きは思ったよりもシンプルで簡単だと感じたのではないでしょうか。
簡単に取得できる分、悪用される危険性も十分にあるということです。
実印と印鑑登録証明書は分けて保管する、印鑑登録証明書を何枚も取得しないなど自身でしっかりと防犯対策を行うことが大切です。
そのうえで、急に印鑑登録証明書が必要になった場合でも焦らず対処できるよう、コンビニなどで手軽に取得する方法を理解しておくと良いでしょう。