銀行口座を開設するときや仕事の契約をするとき、身近なところでは宅配の受け取りなど、日常生活の中で印鑑を使う場面は意外と多いですよね。
そんな印鑑ですが、実は1種類ではなく用途に合わせていくつかの種類に分かれており、状況に応じて正しく使い分ける必要があります。
もし使う印鑑の種類を間違えるとお金にかかわる重大なトラブルに発展する可能性も。
ここでは個人や会社ごとに使い分けが必要な印鑑の種類とその使い分け方をご紹介いたします。
個人で使う印鑑の種類と使い分け
まずは個人が持っておいた方が良い印鑑の種類と使い分けについてです。
一般的には「実印」「銀行印」「認印」の3種類が主に日常生活で必要になる印鑑になります。
それぞれの使い方や意味を詳しく見ていきましょう。
実印
実印とは住民登録をしている市区町村の役所に申請の届け出をしたうえで認められた印鑑のことです。
「実印」という印鑑があるのではなく、役所に届け出をした印鑑が「実印」となります。
届け出が済んでいない場合、いくら自分が実印だと主張しても契約先には実印の扱いをしてもらえませんので注意。
実印は銀行印や認印と比べて最も重要度が高く、公的に証明された印鑑であることから当人が責任を持って契約を行うことを契約先に信頼してもらうためのアイテムになります。
公的な書類や不動産・車の契約など大きなお金が動く場合、特にローンなど大きな借金をする場合に必要です。
実印は印鑑登録を行うことで「印鑑登録証明書」を発行できるようになり、印鑑登録証明書があればその印鑑が実印であることを証明してくれます。
実印と印鑑登録証明書がセットになると上記のような大きな契約を取り交わすことができてしまうので、自分以外の人には絶対渡さず、別々の場所にしっかり保管しておくことをおすすめします。
実印は1人1本のみ登録でき、他の人と同じ印鑑は使用できません。
つまり夫婦の場合でも共用ではなくそれぞれに必要となります。
女性はあまり使うことがないと感じるかもしれませんが、きちんと自分用の実印を用意しておきましょう。
銀行印
銀行印とは金融機関での口座開設などで使用する印鑑のことです。
実印同様、「銀行印」という印鑑があるのではなく、口座開設などの際に使用した印鑑が「銀行印」となります。
銀行印の場合は1種類しか使えないというルールがないため、銀行によって印鑑を変えることも可能です。
その場合はどの銀行にどの印鑑を登録してあるのかを忘れてしまわないよう注意が必要です。
逆に複数の銀行で全て同じ印鑑を登録することも可能ですが、こちらの場合はもし印鑑を紛失してしまうと全ての銀行で変更の手続きをしなければいけません。
銀行ごとに印鑑を変え、それぞれの印鑑をきちんと管理することがベストでしょう。
こちらも実印同様、お金にかかわる重要な印鑑ですので紛失や盗難には十分注意し、慎重に扱うことが大切です。
また万が一紛失や盗難にあった場合のリスクが高まるため実印と同じ印鑑を銀行印に使うことも避けた方が良いです。
認印
認印は実印や銀行印のようにどこかへ登録するといった必要はなく、宅配の受け取りや一般的な事務処理の際に使用する印鑑のことです。
こちらは公的な証明などはありませんが、内容を承認したうえで捺印するという点では実印や銀行印と同様ですので、その行為には責任を持つ必要があります。
認印は自分の名前が入ってさえいれば基本的に何でも良いため、例えば100円ショップなどで購入できる三文判やシャチハタなども使用できます。
もちろん実印や銀行印に登録してある印鑑を認印として使うこともできますが、こちらは複製などのリスクが生じるため併用は避けた方が良いでしょう。
会社で使う印鑑の種類と使い分け
次に、会社で必要となる印鑑の種類と使い分けについてです。
会社に勤める側であれば特に意識することはありませんが、自分で起業して新しいビジネスを始める際にはいくつか用意しておくべき印鑑があります。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
代表者印
代表者印は会社の実印のことで、法務局へ登記する際に印鑑登録を行います。
実務の中で重要な契約を取り交わす際に必要となります。
代表者印は会社の取引にかかわる重要な印鑑ですので表記などは慎重に決めましょう。
通常は外側に会社名、内側に役職名を彫刻したものが使われます。
会社銀行印
会社の口座を開設する際などに使用する印鑑のことです。
実印と同じものを登録することも可能ですが、個人の場合と同様に紛失や盗難のリスクが生じるため別の印鑑を用意した方が良いでしょう。
また会社によっては代表者ではなく経理担当者などが銀行印を所持する場合もあり、代表者印と併用してしまうと悪用される可能性も高まります。
銀行印は代表者印と区別するため一回り小さいサイズにし、外側に会社名、内側に「銀行之印」と彫刻したものがよく使われています。
角印
角印は個人の場合の認印と同じ立ち位置の印鑑で、他の印鑑が円形であるのに対しこちらは四角形であることから角印と呼ばれています。
代表者印や会社銀行印と異なりどこかへ登録する必要はありません。
主に請求書や領収書に使用し、会社名だけが彫刻されていることが多いです。
趣味で使う印鑑の種類と使い分け
こちらは全ての人が所持しているわけではありませんが、知識として知っておくと良い印鑑についてです。
落款印
落款印とは書道や絵画など自分の作品に対して捺印する印鑑のことで、その作品が自分のものであることを示す「しるし」として使われます。
プロでなくても使うことができますので、趣味で作品作りをしている方はぜひ1本持ってみてはいかがでしょうか。
落款印は内容によって更に3種類に分類されます。
作品の右上に自分の好きな言葉や座右の銘を押すことで気持ちを引き締める「引首印」(関防印)、作者を示す「姓名印」、雅号(ハンドルネームのようなもの)を示す「雅号印」です。
3点が揃っている必要はなく、自由に使い分けることができます。
蔵書印
蔵書印とは、自分が所有している本に捺印することで所有者を示す印鑑のことです。
例えば図書館の本に「○○図書館」と押されているのを見たことがあると思いますが、これが蔵書印になります。
基本的には図書館や学校図書など公共の本に押されていることが多いですが、個人が所持している本に押すことも可能です。
お気に入りの本に「○○蔵書」などと自分の名前の印鑑を押すと、ちょっとだけ格式高くなったような気持ちになって本に対する愛着も増すのではないでしょうか。
実印や銀行印などのようにきまりがあるわけではないので、デザインにこだわってオシャレな印鑑を作ってみるのも良いでしょう。
シャチハタと三文判の違い
印鑑の種類と使い分けについてご理解いただけたところで、続いては認印としてよく名前を聞く「シャチハタ」と「三文判」の違いについてご紹介いたします。
どちらも低価格で気軽に購入できる印鑑のため同じものという認識の方も少なくありませんが、実際は作りなどに大きな違いがあります。
詳しく見ていきましょう。
シャチハタ
シャチハタとは朱肉を必要としないインク浸透型のスタンプ印のことです。
朱肉を用意しなくてもキャップを外すだけで捺印ができるため持ち運びが便利で携帯用の認印として利用されることが多いです。
ただしシャチハタは印面がゴムでできているため変形しやすい素材となります。
また朱肉ではなくインクのため時間経過によって消えてしまう可能性があり、認印としても利用できないことがあります。
このことからシャチハタは認印としてもあまり適切とは言えません。
基本的にシャチハタは回覧の確認や宅配の受け取りなどの一時的なサインとしてのみ使うようにしましょう。
三文判
三文判は大量生産されたプラスチック製の印鑑のことで、印鑑屋さんだけでなくホームセンターなどで手軽に購入できるため急に必要になった際に便利です。
三文判がシャチハタと大きな違う点は、朱肉が必要であるということです。
ゴム印で作られたシャチハタと比べて印影が変形するリスクが少ないため認印として幅広く利用できます。
認印として1本用意する場合はシャチハタではなく三文判にした方が無難です。
ちなみに三文判は実印や銀行印として登録することができます。
しかし三文判は大量生産された印鑑ですので世の中に全く同じ印鑑が出回っているということになり、悪用されるリスクが高いので認印以外には使わない方が良いでしょう。
役所によっては、登録はできるものの不適切であるため避けてくださいといった記載がされている場合もあります。
印鑑の選び方と意味合い
ここからは実際に印鑑を購入する際に知っておくと良いサイズや書体の違いについてご紹介いたします。
特に実印には登録できない条件などもありますので、せっかく作ったのに受理されなかったということにならないようあらかじめ確認しておきましょう。
実印
サイズ
実印として使える印鑑は8.0mmから25.0mmの正方形に収まるサイズと定められており、極端に小さな印鑑や逆に大きすぎる印鑑は登録ができませんので注意。
男性であれば16.5mmまたは15.0mm、女性であれば15.0mmまたは13.5mmが一般的です。
また夫婦の場合、女性の方が大きいサイズで実印を作ると男性側の運が弱まり夫婦関係に悪影響を及ぼすと言われており、男性の方が大きいサイズで作る方が良いとされています。
男性の実印サイズに合わせて、女性は一回り小さいサイズを選ぶと良いでしょう。
書体
実印用の印鑑で主に使われるのは「印相体」(いんそうたい)という書体です。
吉相体とも呼ばれ、篆書体をアレンジした複雑な字体となっているため偽造されにくいという特徴があります。
またそれぞれの文字が外枠に接するように伸びているため枠が欠けにくいのもポイント。
実印は印鑑が少しでも欠けてしまうと使えなくなり、新しい実印を登録し直さなければいけません。
男女ともに印相体がおすすめですが、女性の場合は「細篆書体」も柔らかい雰囲気があり人気が高いです。
彫り方
実印の彫り方は男女で違いがあり、男性の場合はフルネームの縦書き、女性の場合は名前のみを横書きで彫るのが一般的です。
縦書きの実印には成長や繁栄、横書きの実印には安定や守護という意味が込められています。
この2つが対となって家庭を守ってくれるのです。
また女性は結婚などで苗字が変わる可能性があるため、その場合でも実印を作り直さなくて済むように下の名前のみとなっています。
素材
印鑑の素材は特にきまりがありませんが、実印は一生ものの買い物になる方がほとんどですので、丈夫で長持ちするものが良いでしょう。
男性であれば「黒水牛」や「チタン」、女性であれば「琥珀」や「彩樺」などが人気も高くおすすめです。
銀行印
サイズ
銀行印は実印と区別がつくように一回り小さいサイズを選ぶのがおすすめです。
男性であれば15.0mmまたは13.5mm、女性であれば13.5mmまたは12.0mmが一般的ですが、銀行印は実印のようにサイズの規定はありませんのでお好みで選んでも問題ないでしょう。
また夫婦の場合は、実印と同様に男性の方が大きく、女性の方が一回り小さい方とバランスが良いとされています。
書体
銀行印は実印と同様、複雑で複製しにくい書体を使うのがおすすめです。
こちらも「印相体」や「篆書体」などを使うと良いでしょう。
彫り方
銀行印は男女ともに横書きで、男性は苗字のみ、女性は名前のみというのが一般的です。
「お金が縦に流れてしまわないように」という意味が込められており、横書きにすることで受け皿となりお金が貯まるとされています。
素材
銀行印も欠けたり変形したりすると登録し直す必要が出てくるので、実印と同様に丈夫で長持ちするものが良いでしょう。
実印と同じ素材でセット購入するのがおすすめです。
認印
サイズ
認印のサイズは銀行印よりも更に一回り小さいものを選び、実印>銀行印>認印となるように決めるのがおすすめです。
男性であれば13.5mmまたは12.0mm、女性であれば12.0mmまたは10.5mmが一般的です。
書体
認印は日常的に利用する簡易的なサインの役割を担うものですので特に複雑な書体を選ぶ必要はなく、古印体などの読みやすい書体で良いでしょう。
彫り方
認印は男女ともに苗字の縦書きが一般的です。
認印は誰が押したものかがすぐに分かる方が良いので、より読みやすい縦書きが良いとされています。
素材
認印はプラスチック製の三文判などでも使用できるので正に自由なのですが、せっかくであれば実印・銀行印と同じ素材でセット購入するのがおすすめです。
印鑑の選び方まとめ
実印 | 銀行印 | 認印 | |
---|---|---|---|
サイズ | 男性:16.5mm/15.0mm 女性:15.0mm/13.5mm |
男性:15.0mm/13.5mm 女性:13.5mm/12.0mm |
男性:13.5mm/12.0mm 女性:12.0mm/10.5mm |
書体 | 印相体や篆書体など複雑で複製されにくい書体 | 古印体など読みやすい書体 | |
彫り方 | 男性:フルネーム・縦書き 女性:名前のみ・横書き |
男性:苗字のみ・横書き 女性:名前のみ・横書き |
男女ともに苗字・縦書き |
素材 | 男性:黒水牛・チタンなど 女性:琥珀・彩樺など |
印鑑の種類と使い分けのまとめ
印鑑には様々な種類があり、それぞれにしっかりとした意味と使い方があることが分かりましたね。
使い方を誤るとトラブルにつながりますので、実印と認印に同じ印鑑を使ったり偽造されやすい印鑑を実印に選んだりといったことがないよう注意しましょう。
印鑑は自分自身を証明する大切な存在です。
日本ならではの風習や心遣いの残る伝統品として、思いを込めた一生ものの印鑑を作ってみてはいかがでしょうか。