個人が日常生活で使用する印鑑は「実印」・「銀行印」・「認印」と大きく3つの種類に分けられます。
それぞれに異なる意味と役割があるため、よく分からないまま同じ印鑑を兼用している場合などは思わぬトラブルに巻き込まれる可能性も。
違いを正しく理解してきちんと使い分けることが大切です。
ここでは3つの印鑑の使い分けと兼用することのリスクについて解説していきます。
実印とは
まずは実印がどういう印鑑で、どんな場面で使用するのかをご説明いたします。
実印とは、住民登録をしている市区町村の役所に申請の届け出をしたうえで認められた印鑑のことです。
「実印」という名前の印鑑が存在するわけではなく、役所に登録した印鑑を「実印」と呼びます。
実印は主に不動産や車を購入する際のローンや保険の契約など大きなお金が動く場合に必要とされます。
例えば住宅ローンを組む場合、数百万円から数千万円の高額な借金をすることになりますよね。
ローン会社側に「自身が責任を持って支払いを行うこと」を証明し、信用を得てからでないとお金を貸してもらえません。
そこで登場するのが実印です。
実印は役所に登録された自分だけの印鑑ですから、契約書に捺印したのが契約者本人であること、そして本人の意思のもと契約したことを証明してくれます。
適当な印鑑で契約した場合、あとから「これは自分の印鑑ではない」と主張されて返済が行われないといったトラブルにつながる可能性があります。
そのため、重要な契約では実印、そしてその印鑑が実印であることを証明する「印鑑登録証明書」のセットが必要とされるのです。
印鑑登録証明書はコンビニなどでも発行できるよう対応が進んでいますが、印鑑登録は役所へ足を運ぶ必要があります。
急きょ必要になった場合でも焦らなくて済むように、あらかじめ印鑑登録を行っておくことをおすすめします。
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銀行印とは
続いて銀行印の役割についてご説明いたします。
銀行印とは金融機関で口座開設を行う際などに登録する印鑑のことです。
実印同様、「銀行印」という名前の印鑑が存在するのではなく、銀行に登録した印鑑が「銀行印」となります。
実印は1人につき1本のみを役所へ登録するのに対して、銀行印は銀行によって違う印鑑を登録することも可能です。
ただし、どの銀行にどの印鑑を登録してあるのかを忘れてしまわないよう注意が必要です。
逆に複数の銀行で同じ印鑑を兼用することも可能ですが、こちらの場合はもし印鑑を紛失してしまうと全ての銀行で変更の手続きをすることになるのでリスクが高くなります。
なるべく銀行ごとに印鑑を変え、それぞれの印鑑をきちんと把握しておくことがベストでしょう。
銀行印は主に口座開設の際に使用しますが、他にも小切手の発行やクレジットカードの作成、引き落とし口座の登録などでも必要になる場合があります。
また窓口で現金の引き出しを行う場合にも必要です。
銀行印はその銀行に登録された口座の所有者であることを証明する重要な印鑑です。
実印と同じくお金にかかわる印鑑なので紛失や盗難にあわないよう管理には注意しましょう。
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認印とは
最後に認印の役割についてご説明いたします。
認印は実印や銀行印のようにどこかへ登録する必要はなく、逆に言えば実印や銀行印でないものは全て認印ということになります。
認印は主に宅配の受け取りや一般的な事務処理の際に使用する印鑑です。
認印には公的な証明などはありませんが、「内容を確認しました」という意味で捺印するという点では実印や銀行印と同じですので、その行為にはきちんと責任を持ちましょう。
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また認印の1つとしてよく名前を聞く「シャチハタ」と「三文判」の違いについても簡単に触れておきます。
シャチハタ
シャチハタは本体にインクが内蔵されており、朱肉がなくても捺印が可能な浸透型のスタンプ印の通称です。
「認印=シャチハタ」と思っている方もいますが、シャチハタはあくまで認印としてよく使われている印鑑の種類の1つになります。
シャチハタは印面がゴムでできているため変形しやすくなっています。
またインクは朱肉よりも消えやすく、長期間保存しておく書類の場合は不適切であることから認印としても利用できないことがあります。
回覧の確認や宅配の受け取りなど、手書きでサインする代わりに使うような場合はシャチハタでも問題ないでしょう。
三文判
三文判は大量生産されたプラスチック製の印鑑のことで、ホームセンターなどで手軽に購入することができるため急きょ認印が必要になった際に便利です。
三文判は朱肉が必要な印鑑となっており、シャチハタと比べて変形のリスクが少ないため認印として幅広く利用されています。
認印として1本だけ用意する場合はシャチハタではなく三文判を選んだ方が良いでしょう。
ちなみに三文判は実印や銀行印として登録することもできます。
しかし三文判は大量生産された印鑑のため同じ印鑑を所持している第3者に悪用されるリスクがあり、認印以外での使用はおすすめしません。
自治体によっては三文判の登録は不適切と注意書きされている場合もあります。
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実印と銀行印・認印を併用するリスク
実印と銀行印・認印の役割と違いが分かったところで、次はこれらの印鑑を併用することのリスクについてご説明いたします。
揃えるのが面倒だから、お金がかかるから、と1本の印鑑に3つの役割を全て背負わせてしまうのは危険です。
紛失・盗難によるリスク
まず、実印と銀行印・認印の印鑑を併用すると、その1本の印鑑を無くしてしまった場合の手続きが非常に面倒です。
例えば単に認印として使っているだけの印鑑なら無くしても買い直せば済む話ですが、実印と併用していた場合は実印の再登録が必要になります。
更に銀行印とも併用していた場合は銀行へも足を運んで再登録しなくてはいけません。
印鑑を変更するために役所や銀行を行き来する方が面倒ですよね。
しかし、だからといって再登録の手続きを後回しにしてはいけません。
無くしただけだと思っていた印鑑が、実は盗難にあっていたという可能性もあるからです。
認印なら特に問題ありませんが、実印や銀行印としても使っている印鑑の場合は勝手にローンを組まれたり預金を引き出されたりといったリスクがあります。
認印は普段から持ち歩くことも多いので紛失などのリスクも高まります。
実印と銀行印は別に用意し、必要なタイミング以外は自宅などでしっかり保管することをおすすめします。
偽造されるリスク
次に、印鑑を偽造されてしまう危険性についてです。
例えば回覧の確認や宅配の受け取りサインとして普段から使用している認印を実印や銀行印と併用していた場合。
悪意を持った第3者が捺印された印影を使って印鑑を偽造する可能性があります。
偽造された印鑑は盗難された場合と同様、ローン組みや預金引き出しに悪用されてしまうかもしれません。
実印や銀行印はお金にかかわる重要な役割を持っているので、認印のように不特定多数の目に触れる場所での利用を避けるためにも併用はしない方が良いでしょう。
印鑑の作り方の違い
実印と銀行印、認印にはそれぞれ役割があり、併用せずに1本ずつ用意した方が良いということをご説明してまいりました。
ここからは、実際に印鑑を作る際に知っておくと良いポイントをご紹介いたします。
実印
実印は非常に重要な意味を持つ印鑑ですので、読みやすさよりも複製しにくさを重視しましょう。
例えば実印に使う書体は「印相体」(いんそうたい)や「篆書体」(てんしょたい)といった複雑なものを選ぶと良いです。
特に印相体は篆書体を更にアレンジした書体で、作り手によってアレンジの仕方も異なるため複製が非常に難しくなっています。
また文字と外枠が接するように線を伸ばしているため枠の強度アップにもつながります。
実印は男女で印面の文字に違いがあり、男性の場合はフルネームの縦書き、女性の場合は名前のみを横書きで彫るのが一般的とされています。
縦書きは成長や繁栄、横書きは安定や守護という意味が込められており、この2つが対となって家庭を守ってくれるのです。
また女性は結婚などによって苗字が変わる可能性があるため、その際に実印を作り直さなくて済むように下の名前のみとなっています。
銀行印
銀行印も実印と同様に重要な役割を持つ印鑑のため、複製しにくい書体を選びましょう。
こちらも印相体や篆書体がおすすめです。
銀行印も男女で印面の文字に違いがあります。
彫りの向きは男女ともに横書きで、男性は苗字のみ、女性は名前のみというのが一般的です。
こちらは「お金が縦に流れてしまわないように」という意味が込められており、横書きにすることで名前が受け皿となりお金が貯まるとされています。
昔からの習わしや縁起的な意味が込められているのもなんだか日本人らしいですよね。
認印
基本的に認印は手書きサインの代わりとして使う印鑑ですので、あえて複雑な書体を選ぶ必要はなく、古印体や行書体などの読みやすい書体がおすすめです。
わざわざ作るのが面倒な場合はホームセンターなどで購入した三文判などを利用しても問題ありません。
また認印は男女ともに苗字の縦書きが一般的です。
認印は誰が押したものなのかがすぐに分かる方が良いので、より読みやすい縦書きが良いとされています。
名前以外にもイラストなどが入ったかわいい印鑑を利用することも可能です。
印鑑のサイズの違い
印鑑のサイズは実印>銀行印>認印となるように選ぶのが良いです。
実印は登録する際にサイズの条件があるため、実印のサイズを決めてから一回りずつ小さくなるように銀行印と認印を決めるとスムーズでしょう。
実印
実印登録が可能な印鑑は8.0mmから25.0mmの正方形に収まるサイズと定められており、極端に小さな印鑑や逆に大きすぎる印鑑は登録することができません。
男性であれば16.5mmまたは15.0mm、女性であれば15.0mmまたは13.5mmが一般的です。
また夫婦の場合、運気的な面から男性の方が大きいサイズの印鑑を持つと良いとされています。
男性の実印サイズに合わせて、女性は一回り小さいサイズを選ぶと良いでしょう。
銀行印
銀行印は実印のようなサイズの規定はありませんのでお好みで選んでも問題ありません。
一般的には男性であれば15.0mmまたは13.5mm、女性であれば13.5mmまたは12.0mmがおすすめです。
また夫婦の場合は、実印と同様に男性の方が大きく、女性の方が一回り小さい方とバランスが良いとされています。
認印
認印は男性であれば13.5mmまたは12.0mm、女性であれば12.0mmまたは10.5mmが一般的です。
こちらも特に規定はありませんので自由に選んでも問題ありません。
印鑑の登録方法の違い
印鑑の準備ができたら次は印鑑の登録です。 実印と銀行印はそれぞれ届け出先や手順が異なりますので確認しておきましょう。
実印
実印の登録は自身が住民登録をしている市区町村の役所になります。
委任状があれば代理人でも申請できますが、原則として本人が直接手続きを行いましょう。
必要なものは登録する印鑑と、免許証やパスポートなど写真付き身分証明書、登録手数料(自治体によって金額が異なります)の3つです。
身分証明書は写真付きでなくても行えますが、手続き完了までに時間がかかるため写真付きのものを用意した方がスムーズです。
また実印は家族であっても印影の重複が認められていません。
間違えて家族の印鑑を持ってきていないかきちんと確認しましょう。
役所に出向いたら印鑑登録申請書を記入し窓口へ提出します。
印鑑の捺印と身分証明書の確認ができたら登録完了です。
時期にもよりますが、早ければ10分ほどで終了するので思ったよりも簡単だと思われるかもしれません。
銀行印
銀行印は口座を開設する金融機関の窓口で指定用紙に捺印するだけです。
印鑑の申請をするというよりは、口座開設の申請で印鑑も登録するイメージです。
銀行印は実印と同様、家族であっても印影の重複が認められていません。
ただし銀行印は口座ごとに別の印鑑を登録できるため、異なる金融機関であれば同じ印影でも登録が可能です。
認印
認印はどこかへ登録する必要はなく、印影の重複などを気にする必要もありません。
実印や銀行印として登録していない印鑑は全て認印となります。
印鑑の変更方法の違い
印鑑を紛失した場合や印鑑が欠けてしまった場合などは、新しい印鑑を再度登録する必要があります。
実印
実印を変更する場合は、現在登録している印鑑の廃止届を提出し、その後新しい印鑑で実印登録を行います。
印鑑登録の際に必要な持ち物に加え、廃止する旧の印鑑と印鑑カードも持って役所へいきましょう。
紛失による変更の場合も流れは同じで、紛失届を提出してから新しい印鑑で実印登録を行います。
銀行印
銀行印の変更も届け出先が役所から金融機関になるだけで手続きは同様です。
変更前の銀行印と新しく登録する印鑑・通帳・本人確認書類を持って窓口へ行きましょう。
紛失の場合は先に紛失届を提出してから変更となります。
実印や銀行印は、変更したあとに以前の印鑑が見つかった場合でも再度変更手続きをしなければ元に戻すことはできません。
決して安い買い物ではないので、紛失には十分注意しましょう。
認印
認印はどこかへ変更の連絡をする必要はありません。
紛失した場合は新しい印鑑を購入し、もし以前の印鑑が見つかった場合はそのまま引き続き利用することができます。
実印・銀行印・認印の役割まとめ
実印と銀行印・認印は役割や意味はもちろん作り方や登録方法も異なります。
今まで何となく使っていた方も、きちんと役割を理解したうえで使い分けることで危険から身を守ることができます。
3本セットで購入すると割引をしてくれるお店などもありますので、この機会に3本を揃えてみてはいかがでしょうか。