実印などの印鑑を作る際に悩むポイントの1つが印材ですよね。
最近はチタンなどの金属やクリスタルなどのパワーストーン印鑑が流行を見せていますが、古くから「印鑑の王様」としてその地位を確立しているのが「象牙」(ぞうげ)です。
ここでは象牙で作る印鑑の特徴やお手入れの方法などを詳しく解説していきます。
実印におすすめ!「象牙」の特徴
象牙といえば実印の印材を選ぶ際に必ず名前が挙がる定番で人気の高い素材です。
真っ白ではなく、ほんのり黄色みのある落ち着いた色合いが高級感を演出しています。
「アイボリー」という色の名前を耳にしたことがあると思いますが、「アイボリー」とは英語で象牙を表す単語です。
つまり、「アイボリー色」は象牙の色のことを指しているのです。
そんな独特の色合いが人気を集めている象牙は使い心地や耐久性にも長けており、まさしく「印鑑の王様」と呼ぶにふさわしい品質となっています。
摩耗への耐久性が高く、長く使い続けても印面が欠けたり擦り減ったりすることがありません。
特に「芯持ち」と呼ばれる中心部で作られた印鑑は、チタンなどの金属印鑑にも負けない強度があると言われています。
実印は何度も購入するものではないので、一生ものの買い物として大変おすすめの素材です。
また捺印性にも優れており、朱肉の馴染みが非常に良くハッキリと美しい印影が表現できます。
1度でしっかり印影を残せるため、押し直しができない重要な書類に捺印することの多い実印に向いています。
その他の素材との違い
象牙と同じ動物質の素材には「牛角」(うしのつの)やマンモスなどがあります。
象牙とはどのような違いがあるのでしょうか。
牛角はオランダ水牛とも呼ばれ、クリーム色に飴色の模様が入った透明感のある色合いが特徴の素材です。
角系素材は動物性のたんぱく質が主な成分で、硬さがあるものの乾燥や虫食いに弱くこまめなメンテナンスが必要となります。
マンモスは象牙と品質が近く、代用品として人気を集めている素材です。
ただしマンモスは現存していないため、凍土から発掘される何千年も前の牙を利用しています。
象牙と比べるとやや黄色みが強く、見た目の高級感という点においては象牙に少し劣ります。
デザインには好みがあるので必ずしも象牙が1番良いというわけではありませんが、耐久性や捺印性などが重要になる実印の場合は象牙が頭一つ秀でていると言えるでしょう。
象牙の部位によるランクと選び方
象牙の印鑑ならどれでも良いというわけではありません。
印鑑として加工する部位によってランクが分かれており、外側と中心部では品質が大きく変わりますので実印を作る場合はしっかりと見極めることが大切です。
象牙には木の年輪のような層があり、外側から「外皮層」・「中皮層」・「中心層」に分かれています。
中心部に近ければ近いほど、繊維の密度が高く耐久性に優れているとされています。
また中心部は1本から1~2本程度しか取れないためより希少で値段も高いです。
逆に外皮層から外側の部分は密度が低く品質も落ちるので注意が必要。
相場よりも大幅に安い値段で販売されているものは、たとえ象牙であっても質が悪い可能性があるので実印にはおすすめできません。
認印などであれば問題ありませんが、実印に使う場合は中心部の丈夫な素材で作るようにしましょう。
象牙の最高級品「日輪」
象牙の中でも最も高級とされているのが「日輪」(にちりん)と呼ばれる部分です。
「横目芯持ち」とも呼ばれ、中心部にある芯から横目に切り抜くことで年輪のような模様がボディに描かれる特別な素材です。
こちらは色の濃い象牙からしか取ることができないため、通常よりも更に希少性が高くなっています。
中心部を使っているためもちろん耐久性は抜群で実印に向いています。
その希少性から値段も非常に高価となっており、サイズによっては100,000円以上になることも。
値は張りますが、持っているだけでもステータスになるので法人の代表印などにもおすすめの素材です。
象牙のお手入れ方法
象牙は耐久性が高く一生使える素材として有名ですが、自然のものを使っているためあまり雑に管理をしていると劣化する可能性があります。
特に実印は頻繫に使うものではないので、保管する環境によって長く使い続けられるかどうかが変わります。
まず象牙は乾燥や激しい温度の変化に弱い面があるので、裸で保管することがないようにしましょう。
特に冬場は暖房が付いているときと付いていないときで温度に大きな差が出ます。
このような環境に長期間放置しておくとひび割れなどを起こす場合があるので注意。
更に象牙は水分を吸収しやすい素材でもあり、流水でゴシゴシ洗うという方法はあまり適していません。
掃除をする際は、柔らかい毛先の歯ブラシなどを使って優しく磨くと良いでしょう。
また使用後はティッシュなどで朱肉をふき取るよう普段から癖を付けておくことがおすすめです。
ちなみに象牙は朱肉も染みやすく、中には象牙の印面周りに染みる朱肉の色を「味」と感じる方もいます。
長年使っている証拠にもなるので、あえて染みを残して愛着を持たせるのも良いかもしれません。
象牙は年々希少性が高くなっている
象牙の価格が高騰している理由として、ワシントン条約による輸入制限があります。
輸入が禁止されたのは1989年のことですので、現在象牙の印鑑として販売されているものは1989年以前に輸入されたものということになります。
このため新たな象牙が日本に入ってくることがなく、年々在庫も減っていることから値段は高騰する一方です。
また取り扱い自体をやめているショップも急増しており、業界大手のハンコヤドットコムなども販売を終了しています。
今後も値段の高騰や取り扱いショップの減少が続くことが予想されるため、象牙で実印を作ろうと考えている方は早めの購入をおすすめします。
【象牙印鑑が売ってない】象牙印鑑を販売終了する印章店が増えている理由
彫り直しをして次の世代へ受け継ぐ方も
象牙に限らず、印鑑はコンディションによっては彫り直しをして使い続けることが可能です。
認印などの印面が小さいものや大きく破損してしまった場合は彫り直しができませんが、実印の上部が少し欠けた程度なら対応してもらえることが多いので確認してみてください。
安価な素材であれば新たに購入した方がコスパも良いですが、象牙は希少で高価な素材なので彫り直しをして使い続ける価値があると言えます。
彫り直しの場合、現在彫られている印面を平らにしてから再度彫刻を行うためボディの長さが少し短くなる点だけ注意しましょう。
象牙の価格相場
以下に大手通販サイトの象牙の価格相場をまとめました。
今回は15.0mmサイズの相場をまとめていますが、印鑑のサイズやその他のオプションによっても前後するため参考程度にご覧ください。
店舗名 | 象牙(日輪) | 象牙(中心部) | 象牙(外皮層) |
---|---|---|---|
はんこプレミアム | – | 30,000円前後 | 16,000円前後 |
平安堂 | 100,000円前後 | 50,000円前後 | – |
畑正 | – | 35,000円前後 | 20,000円前後 |
現在も象牙を扱っている通販サイトは限られています。
価格面で見ると、はんこプレミアムが比較的低価格できちんとした品質のものを購入することが可能。
より品質にこだわった実印を作りたい方は平安堂がおすすめです。
手彫りもできるおすすめ通販サイト
はんこプレミアム
業界最安値の通販サイトで、1本あたり1,980円で手彫りオプションを付けることができます。
象牙のタイプも並と極上の2タイプから選ぶことができ、予算に合わせた実印の作成が可能です。
平安堂
平安堂はとにかく印材の種類が多く、象牙だけでも7種類の取り扱いがあります。
完全手彫りの印鑑を注文することができるので、実印をこだわりたい方にはこちらがおすすめ。
象牙の特徴と選び方まとめ
- 実印におすすめの大人のステータスを感じさせる高級な素材
- 部位によってランクがあり、中でも「日輪」は希少で高価となっている
- 現在は輸入制限により手に入りにくくなっているため、購入を検討中の方はお早めに
年々希少価値が高まっている貴重な素材ですので、珍しい素材が好きな方や高級志向の方におすすめです。
一生ものの実印を作るなら丈夫で使い心地の良い象牙を選んでみてはいかがでしょうか。